マッチ売りの少女と死神さん
第2章 12月31日…死神さんに穢されました
しんしんと雪が降り続くとても寒い大晦日の夜。
街行く人々は、みな温かい格好をしており
そのなかでたった一人だけ、みすぼらしい格好をした少女がいた。
彼女の名前はサラという。
だぶだぶの革靴。
コートも靴下もなく、サラは寒そうな様子で白い息を吐いていた。
「マッチはいりませんか?」
サラはマッチがたくさん入ったかごを腕にぶらさげて、街から街へと売り歩いていた。
しかし今日もまだ一箱も売れそうにもない。
「マッチ…マッチはいかがですか?」
「マッチは家にたくさんあるから、いらないわ」
少女は手も足も真っ赤にしながら必死で声をかけるが、誰も見向きさえしてくれなかった。
「…おお、寒い」
「お母さん、僕、お腹すいたよ」
「早く家に帰って、温かいスープを飲みましょうね」
サラと同じくらいの年の男の子が母親と話しながら、幸せそうに少女のそばを通り過ぎていく。
ゆく道の家々の窓からは、暖かそうな灯りがもれていた。
サラは幸せだった日々を思い出していた。
毎年クリスマスになると、大きなクリスマスツリーを飾り、サラはクリスマスプレゼントをもらえるのを、それはもう、楽しみにしていた。
かつてサラの家は、彼女のおばあさん、お父さん、お母さん、そして少女の、四人家族であった。
しかし、お母さんが病気で亡くなってしまってから、お父さんは変わってしまった。
毎日お酒を飲むようになった。
間もなくしておばあさんも亡くなってしまうと、お父さんはより一層お酒に溺れ、とうとう働くことさえやめてしまったのだ。
それから毎日、少女はこうしてマッチを売り歩き続けているのだった。
雨の日も、雪の日も………