
マッチ売りの少女と死神さん
第4章 1月1日…それはかわいい君のせい
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宿に着き、階段をのぼり部屋のノブに手をかける。
(あれ、ドアの鍵が開いてる?)
ホーリーは細くドアを開けた。
それだけで彼女の気配を感じた。
彼が足を踏み入れる前。
ドア口にぱっと振り向いたサラはテーブルについてお茶を飲んでいたようだった。
「サラちゃん、危ないから鍵は」
「ホーリーさん! おかえりなさい」
「……掛けておかないとダメじゃないか」
さっきまで会っていたのに妙な話だ。
またサラに会えて嬉しいとホーリーは思ったのだ。
咎めるつもりはなかった。 けれど彼女は申し訳なさそうに俯いて、可愛らしい言い訳をする。
「ごめんなさい。 でも、ちょうどお風呂に入ろうと思っていたから、その間にホーリーさんが帰ってきたら、部屋に入れないもの」
「……僕、鍵なんてなくっても開けられるんだよ」
「そうなの? それは…期待を疑わない怪しさだわ、さすがホー」
ゆっくりとサラに近付いた彼が、納得したように頷いている彼女を抱きしめた。
今までは映像の向こうにいた彼女。
この世界に来てからしばらく。
自分はサラという名画の中の女優を観た気分になって浮かれていた。
「リーさ……い、息が、苦し」
でも今はどうしてだろう?
これが三つ目の問題だった。
「それぐらい我慢してよお。 離したくないんだ」
「またっ、そうやって…フザけ……」
サラをどうしても地獄に堕としたい。
それと同じにそうしたくない思いが生まれた。
小さく柔らかなこの生き物にきちんと息をさせてあげたいと。
……僕はこんな気持ちをどう説明していいのか、わからない。
