
マッチ売りの少女と死神さん
第4章 1月1日…それはかわいい君のせい
腕の力を少し緩めるとサラの困ったような声音が聞こえた。
「ホーリーさん……? い、一体」
ホーリーは座ったままの彼女を抱きしめていた。
サラは小柄だ。
今の彼女の顔の位置。
それは長身のホーリーのちょうど上腹部にあたる。
ということは────サラの胸の谷間に、しっかり勃ちあがったホーリーの陰茎が押し付けられてしまうのは、仕方がなかった。
それに気付いたのか、赤面症のサラの顔が赤く染まる。
「一体、帰ってきたなり何なんですか」
「何なんだろうねえ? そんなことよりさ、一緒にお風呂に入るのに、僕を待っててくれたんだよねえ」
何かを言いかけるサラを無視し、ホーリーが彼女を軽々と支えあげた。
(あ、サラちゃんを抱っこしたの、初めてかなあ)
ホーリーはグッときた。
相手のすべてを物理的に自分が所有しているというこの状況に。
『わ、私を好きにしてください』と、彼の妄想の中のサラが横座りになり、顔を赤らめて自分に囁いてきたような気がした。
(何ならずっとこうしていたいなあ。 もっというと、これでヤリたい)
「うんうん。 ちゃんとサラちゃんの気持ちは分かってるよお。 僕は人の死ほどじゃないけど、営みも多く見てきてるから」
実際はサラが暴れながら何か言っているようだった。
妄想に浸ったままのホーリーは構わず、腕の中に収まっているサラの髪に顔をうずめながら、浴室へと向かった。
湯船のお湯を入れるのに蛇口をひねると、たちまち辺りが温かい蒸気で満ちていく。
「そ、そうじゃなくってですね、あのっ! 明日の晩、ローラちゃんの家で夕食に招待されたんです」
現実に戻ったホーリーは、必死で主張してくるサラをぽかんとして見下ろした。
「ん? 誰それ」
「さっきから言ってるじゃないですか!! 外で会ったさっきの女の子ですよ。 ホーリーさんがまた心配してるかと思って、早く帰ってきたのに居ないし、もうっ! あと、さっさと降ろしてくださいってば!!」
「なるほど……」
ホーリーがサラの顔に見入りながら思う。
