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女勇者アンの、華麗なる災難!

第2章 幼なじみと再会で、アンアン大ピンチ!?

『アン』として新しい人生を……とはいえ、この村に来た当初は、『アン』になれるまで、ちょっと苦労したんだよね。

『アン』と呼ばれても、「誰のこと?」なんて思っちゃったりして、反応が遅れたり。

 子供の「アーンアーン!」という泣き声や、犬の「アンッアン」という鳴き声に、誰が見てもわかるぐらい過剰にビクついたり。

 あとはやっぱり……他所の家から、たまーに漏れてくる、お戯れ中の卑猥なアンアン声。あれが一番聞くに堪えない。ついもがき苦しんじゃうの。

 こんなんじゃあ、いつか本名がバレちゃう。そしたら、また私は『アンアン』に逆戻り……。それだけは、絶対に嫌ぁ! 故郷を捨ててまで、ここまで来たのにーっ!

 だから私は、執念で『アン』になりきりながら、この村を守ってきた。その甲斐あって、今じゃすっかり『勇者・アン様』だ。

「しかし、アン様がお強いとはいえ、頼ってばかりで申し訳ないだす。わしら村民にも、もう少し武力があればのぉ……」

 と、ホントに申し訳なさそうに縮こまって言うのは、この村の村長さん。

「そんな、気にしないで下さい。私こそ、この村にずっと置いてもらっているわけだし」

 それに……誰も、私の名前を『アン』だと信じて疑わないし。もちろん、これは口に出して言わないけどね。

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