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『エリーゼのために…』

第1章 エリーゼのために…

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 明日から学校なんてとても行く気にはなれない…

 だけど…

 僕は、次の朝から二学期の始業式にちゃんと登校した。

 だって僕は本当に…

 マジメな、目立たない、普通の中学生の男の子だから…

 葵さんと知り合って、あんな関係になり、未知の世界を知るまでは…

 勉強も普通…

 男女の色々な性的な事も殆ど知らない…

 せいぜいネットで検索する程度の、本当に普通の中学生の男の子であったから…

 そんな学校をサボるなんて事もしたことも無いし…

 ましてやサボる方法すら思い浮かべられないくらいの普通の男の子だったから。

 だから、葵さんのショックがあろうても、行く気が湧かなかろうとも…
 サボれなかったんだ。

 ダサいんだ…


 しかし…

「駿くんおはよう…」
 と、中二の時のバレンタインでチョコレートとラブレターをもらった同じクラスの舞香ちゃんが声を掛けてくる。。

 僕はホワイトデーや、ラブレターの返事もしなかったにも拘わらず、変わりなく…
 いや、それ以上に、今もこうして何かと声を掛けてくれる存在であった。。

 そしてそんな舞香ちゃんが…
「ねぇ、夏休みに何かあったの?」
 
「え、な、何で?」
 僕はドキっとして訊き返す。

「うん、なんかさぁ…
 うーん、なんとなくね…」
 
「え、な、なんとなくって?」

「いつも駿くんを見てるから…
 わ、わかるのよ、お、女のカンね…」
 そう、恥ずかしそうに言ってきた。

「え、あ、い、いつもって…」
 僕はドキンとして、そう呟く。

「あ、もう、バカ、分かってるくせに、意地悪なんだから…」
 そう言って、舞香ちゃんは向こうに行ってしまう。

 え、あ、分かってるくせにって…





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