「シャーク×サルベージ」
第6章 「ラスト・ダンス」
「……カレ、行ってしまったわね」
サーシャがつぶやく
泣き崩れる妹の背をさすりながら
「うう……、お別れなんて……イヤだよぉ」
「ミアは本気でナオトが好きだったのね」
「……それは……わたしだけじゃないでしょう」
「そうね、 きっかけはミアからだったけど、
わたしも途中から彼に夢中だった……
彼ってビーチでも密着してやると驚くのよ
それが可愛くって、ついついまた迫っちゃうの! とても穏やかでいい人だわ」
サーシャは立ち上がる
全裸のまま、まだ薄暗い風景のなかでも彼女の肢体は輝いていた
「さて! 観光客がやって来る前にわたしたちも汗を流してから帰りましょう!」
そう言うとサーシャは裸のまま波打ち際へ駆け出して行った
ミアも慌てて追いかける
ふたりはキャッキャッと水を掛け合いながら、最後に身体を清めるのだった
そこへ
海中から大きな影が近付いてきていることに
まだ彼女たちは気付いていない…
「さぁ、サーシャ!そろそろあがりましょ」
ミアが先に海から上がろうと歩いていく
足取りは重いが、海に入ったことで気持ちが少しリセットされたような気がする
“きっとサーシャも同じ気持ちだろう…”
サーシャからの返事が無いので、気になって振り返る
そこには
青ざめた表情の姉、サーシャが立ち尽くしている
「サーシャ?」
すると
サーシャの身体は凄まじい勢いで右に!
左に!
また右に!
引きずられているようにせわしなく動く
そのスピードは人間のスピードではない!
「さ、サーシャッッ!!??」
「あ………、 み……あ……」
うわごとのようにつぶやくサーシャだが、その身体はぶん!ぶん!と振り回されている!
そして
ズル! と海の中へ突然沈んでしまった!
「サーシャッッ!!!」
ミアが絶叫した瞬間、
彼女の両足が、なにものかによって引き千切られてしまった!
突然のことで、声も出ない
そして痛みも来ない
大きな何かが!
こんどはミアの右腕に食らいつく!
車にでもはねられたかのような凄まじい衝撃
なんの抵抗も出来ないまま
彼女の残された上半身は空を向いて浮かんでいた