テキストサイズ

「シャーク×サルベージ」

第8章 「イルカ・プール」


観客のひとりの男性が叫ぶ


「あ、あ、アイツの口もとッ!
 まだ何か…、引っ掛かってる!」


ナオトはそう指摘され、透明アクリルのほうを振り向く



巨大なサメの口もとに人間の上半身が引っ掛かっている!


しかも



その惨殺された遺体はサーフショップのオーナー、フィンだった!



「!」



一瞬のことでエイプリルは気付いていないかもしれないが、ナオトにはハッキリと目に焼きついてしまった


青白い無表情のフィンの顔が……!


サメの牙に引っ掛かっている!



それをアクリル越しに通り過ぎようと走るナオトとエイプリル



アクリル越しに再会した夫婦の最後の瞬間だった…



ナオトは遣り切れない気持ち

夫人を寝取っていた自分の行為に申し訳なさを感じる


他の男たちがまた声を上げる



「イルカと泳ぐ区画にも向かったぞッ!?」


その瞬間


「ぎゃあああッッッ!!!???」

「うわぁっっ!!!」


次々と様々な場所から悲鳴があがっていく


スタッフと思われる男たちがやって来て所持したライフルを構える!


「早く撃てッッ!?」


「撃つなッ! 客に当たるだろう!」


「すぐに止めろッ!」

「何か武器を持って来いッ!」



怒号が響きわたるなか、銃を乱発する音が響く


ターーン! ターーン!

ドォーーン! ドーーーン!


だが巨大なサメには効果が無さそうだ


象に水鉄砲を浴びせたようなものだ


「このままじゃ、マズいぞッ!?
 この入江の横には一般向けのビーチが有るんだ!」


その声を聞いていたナオトもギョッとした


サマーヴァカンスを楽しむ観光リゾート地が一瞬のうちに地獄絵図と化したのだ



「警察を呼べッ!」

「警察なんかじゃ止められない!
 軍に連絡するんだッ!」


「誰か、ビーチに連絡をッ!」

「ビーチを封鎖させろッ!」


「誰か、アイツを止めてくれッ!」


逃げ惑う人々、誘導したくともどうすればいいのかわからないスタッフたち、親とはぐれた子供


なにもかもが、めちゃくちゃとなった


ストーリーメニュー

TOPTOPへ