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緋色の罠

第2章 緋の想い

「どうかしましたか?僕の顔、何か付いてます?」
「…えっ」
「いえ、急に黙ってしまったから」

 木島さんの声で我に返った。いつの間にか彼の顔を見つめながらいつもの妄想に浸っていたらしい。

 そんな自分が恥ずかしくて顔がカアッと熱くなる。身体も熱くなって奥の方が妖しく疼いてくる。

「もしも良かったら…うちにお寄りになりませんか?いただいたおいしい紅茶があるんです」

 彼を誘う自分の声は甘ったるい湿り気を帯びていた。そこに込められた想いは明白だったから彼にも伝わったはずだ。

 訪れた一瞬の沈黙。

 わたしの胸に、断られたらどうしようという慚愧の念が込み上げてくる。

 もしも断られたら…見っともなくて恥ずかしくて、合わせる顔がない。やっぱり誘うんじゃなかったと後悔したその時

「…それじゃあ、お邪魔しようかな」という声がした。

 ハッと目を上げる。彼の熱っぽい眼差しとわたしの視線が絡んだ。

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