テキストサイズ

緋色の罠

第3章 緋の誘惑〜罠

 "いただいたおいしい紅茶がある"と言ったのは嘘ではない。知人からもらったフランスブランドの高級茶葉があった。夫はコーヒー党なので紅茶を飲むのはわたしだけ。

 木島さんをリビングに案内してソファに座らせた。

 そのソファで毎日わたしが淫靡な行為に耽っていることを思い、恥ずかしさで身体が熱くなる。

「あ、ええと、支度しますからどうぞ寛いでいてください」
「はい。ありがとうございます」

 リビングルームに隣接しているキッチンで紅茶の支度を始める。お湯を沸かしてポットと茶葉を用意しながら、木島さんをさりげなく盗み見る。

 目が合ってしまった。

 慌てて目を伏せ、キッチンボードの扉を開けてティーカープを取り出す。

 何となく場を繋ごうと思い、以前から気になっていたことを聞いてみる。

「木島さん、よく昼間お会いしますけど、失礼ですがお仕事は?」
「ああ、警備会社に勤めているんです。夜のシフトが多いもので」
「警備会社というと、ガードマンですか?」
「いいえ。施設常駐のガードマンじゃなくて、何かあったら駆けつける警備員。ほら、ア〇ソックとか〇〇警備保障とか。テレビCMで聞いたことありませんか」
「ああ!知ってます」

 テレビはあまり見ないが、その名前は知っている。結婚前に勤めていた企業のビルの警備も、その警備会社だったように思う。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ