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緋色の罠

第3章 緋の誘惑〜罠

 全身からサアッと血の気が引いていくのを感じた。

 寒い。身体一気に冷えて力が抜けてしまった

 彼は訥々と話し続ける。

「その、激しく喘いでいる女性の声は、あなたの声でした」
「…」
「僕はあなたが、暴漢に無理やり犯されているんだと思いました。だから足音を立てないように庭に回って、このリビングルームの窓から部屋の中を覗いてみたんです。」
「えっ…見たんですか」
「はい。レースのカーテンが引いてありましたが隙間があったので」
「ああ…」
「カーテンの隙間から覗いたら暴漢の姿はなくて、この、今、僕たちが腰かけているソファーにユリさんが、生まれたままの姿のあなたがいて…」
「その先は言わないで…お願い」

 声だけではなく、いやらしい姿まで見られてしまった…。

 施錠してカーテンを閉めた家の中で何をしても、誰にもわらないと思っていたのに。

 動揺していたわたしは、馴れ馴れしく "優莉(ユリ)" と名前で呼ばれたことに気づかなかった。

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