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緋色の罠

第3章 緋の誘惑〜罠

 唐突に放たれたその言葉になぜかドキッとした。

 スッと立ち上がった木島さんがレースのカーテンを閉め、ゆったりした動作でソファーの元の位置に座り、ティーカップを弄びはじめた。

「聞いたって…何をですか」
「この前、こちらに回覧板を持ってきたとき」
「え…」
「どこからかかすかに女性の声が聞こえました」
「…」
「叫び声のような感じでした。門扉が開いていたので僕は中に入りました」

 まさか…。

 嫌な汗が脇の下を流れ落ちていく。

「玄関のドアに耳を押し付けてみたんです。あなたが暴漢に襲われているのかと思って。もしそうなら、いきなりドアを叩いて大丈夫ですかなんて叫んだら、逆上した暴漢が何をするかわかりません。そういう時は、こちらの気配を悟られずに近づいたほうがいい」
「…」
「でも、聞こえてきたのは襲われて助けを求める声じゃなくて、女性の…高い声で…喘ぎ声でした。ドアをそっと引っ張ってみても鍵がかかっていて開かなかった」

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