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緋色の罠

第6章 緋の遊戯〜疑惑

 その夜は、よく眠れなかった。目を閉じると、太くて固い男根が体内で動くあの感触がよみがえってくる。

 犯されているときと同じように身体が熱くなり、指で熱源の中心に触れてみたら、腿の内側までしとどに濡れていた。

 他人の男性に抱かれながら、身体を震わせ悦びの声をあげ、快感のあまり何度も達してしまった背徳感で、いつもの時間に帰宅した夫の顔をまともに見られなかった。

 夫はわたしの異変に、何も気づかないようだ。

 火照った身体を持て余し、無駄と知っていてもベッドで迫ってみた。しかし、疲れてるからと、いつものように柔らかく拒絶された。

 このままでは眠れない。仕方なく、ぐっすり眠っている夫のすぐ隣で、彼に気づかれないように、指を使って淫らな官能を鎮めようとした。手で口を抑え、漏れそうなる喘ぎを必死で押し殺しながら。

 そんな惨めな自分に涙が出てきた。


 夫がすぐ隣にいるのに、どうして自分で慰めなければいけないの。


 わたしへの愛情が冷めてしまったのなら諦めがつく。もしもそうなら、離婚を視野に入れて、これからのことを、自分の将来を真剣に考えなくては…でも…。

 友人の中には、結婚したものの喧嘩ばかりしている夫婦もいる。別れてはいないが、顔を合わせても口もきかず、家庭内別居の状態だと聞いた。

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