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緋色の罠

第6章 緋の遊戯〜疑惑

 そうだ。もしかし…たら自治会名簿を見たのかもしれない。それでわたしの名前を憶えていたとか。確かめてみよう。

 家に戻り、リビングのキャビネットの中を探し、無料で配布されている自治会名簿を取り出した。

 ページをめくって自分の班を見ると「松永由紀夫」と、夫の名前だけ書いてあった。わたしの名前はどこにもない。自治会名簿には世帯主だけを記載してあるらしい。

 それじゃあ、どうしてわたしの名前を、読み方まで知っているのだろうか。

 何かのきっかけで名前の字を知っていたとしても「優莉」はユリと読むとは限らない。それなのに木島さんは躊躇なくわたしをユリと呼んだ。


 どこかで会ったことがあるのかな。


 しかし顔も木島という名前も覚えがない。木島なんで知り合いはいないはずだ。

 彼の家族がこの地域に引っ越してきて初めて会った。と、思う。

 漠然とした疑惑が大きくなったが、ますます訳がわからなくなった。

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