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「なら、先生は
都合よく用意された相手と
お互いに、何の感情もないままに、
都合がいいからと言うだけの理由で。
ご一緒になられると言う事ですか？」


都合よく用意された相手と

何の感情も無いまま　一緒に…？

校長からお見合いの話を持ちかけられていた

私がいい歳をしてるのに

身を固める所か　それらしい相手も居ないから

他校の教師だが真面目で堅実な

男性教師と会ってみないかと

そんな話を持ちかけられたのは…丁度

期末試験の前辺りの事で


その話を何故…獅堂が知っているんだ？


校長と…私しか…

その話は　知らない話…のはずなのに…


「その男性に貴方の何が分かると？
年齢的につり合いが取れるからですか？
同業者だから仕事に理解があるから？
それだけの事にそれこそ、
何の価値がありますか？
俺には理解も出来ないし、
納得が付く訳もありません」


獅堂の言葉で理解が出来てしまった

彼がそうしてまで　

今　私とここに居る理由が


「すいません…が、先生。
俺はそんな気持ちで、
今ここに居る訳じゃありませんので」


そんな気持ちじゃないとすれば

なら　今お前はどんな気持ちで

私の前に座って居るんだと

そう訊ねてしまいそうになって
その言葉を若葉は飲み込んだ

訊いてはいけないと…　感じたからだ

彼の言葉に偽りがないのは
その顔を見れば分かる
言葉にして尋ねるまでも無い事だ

だが　それを知った途端に

自分の背筋が凍る様な

そんな感覚を感じたのも　事実だ

それ以上の言葉を返さずに
そのまま何も無かったようにして
残りの時間の補習授業を行った

その日の夏季補習を終えて
獅堂は駅に向かって歩いていた

宇梶からは昨日お持ち帰りされた
年上の水着美女と…楽しくしてる
画像がLINEに送られて来ていて
宇梶には…送る画像は選んでくれと
そう返事を返して置いた

獅堂がスマートフォンを
制服のポケットに入れ直すと

通学路から学校の方を振り返った

校舎のあの場所…は

さっきまで俺が先生と居た部屋がある

まだ…電気がついて居たから

先生は…居るんだな…あのさっきの部屋に


獅堂は踵を返すと

また駅へと向かって歩き始めた