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「現実が見えて、分かってるからこそ
俺は、こうなってるんですよ！」

「…ッ、獅堂…分かっているのなら…ッ
これ以上は、お前も踏み込むな。
それは、お前の為だし、私の為だ」

真っすぐに向けられて居る
真夏の太陽の様な熱い
彼の双眸に捉えられて射貫かれて

身じろぐ事すらも出来ずに


「何もかも無かった事にしろ…と？」

「今なら、まだ…何も」

間違いは起きてないのだから引き返せる

傷らしい傷を　リスクらしいリスクも
お互いに負う事はないのだ

そう　今なら

今なら　戻れる

教師の中の一人と
生徒の中の一人の

今まで通りの関係に戻るだけだ


今までがそうだった様に

若葉の言葉に総一郎が俯くと
首を小さく左右に振りながら
ふぅっとため息を付いた


「先生はあまり、俺を見てる様で
理解出来てないみたいですね…。
先生…貴方が想像してる以上に、
俺は…色々と手遅れですよ？」


今回の赤点の事と
さっきの画像で脅迫して来た事も


「獅堂…、だが」

「だったら、せめて…、時間が欲しい…です」


時間が欲しいと言われてしまって

時間？いつの時間？


「今は晩婚の時代だ…、平均初婚年齢も
時代の移り変わりと共に推移して来てる」

一瞬　獅堂の言う　時間が欲しいと
日本の晩婚化の話が若葉の中で
繋がらずに居て混乱してしまっていた

「晩婚…。厚生労働省のデータによれば
多少古いデータにはなるが、
令和元年の平均初婚年齢は、
男性が31.2歳、女性が29.6歳。
平成７年のデータからしても、
年々晩婚化が進んで居るのが分かるな
それだけ社会が男女平等になって居るのが
その背景にはあるだろうが…それ以外の理由として」

そう若葉が近年の晩婚化が
進んで居る原因について
社会の教師らしい話をして来て

「後は、そうだな女性の
収入が上昇してるのに、男性の
収入の上昇はほとんどなく、子育てや
年金の減額による老後のお金の心配
そう言った事も、晩婚化を進めている
要因の一端ではあるな…」

とそこまでその時代背景を説明して
若葉がこちらを見ている
総一郎の顔を見て　喋り過ぎたかと
思ってその続きを話すのを止めると