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ソルティビッチ

第1章 ソルティビッチ…

 10

 そんな彼は、わたしには全く興味が無いみたいであった…

 それはそれで仕方がない…

 そんな夜もある…

 しかし…
 それは違っていたのだ。

「彩ちゃんおかわり」
 わたしはカクテルのお代わりを頼む。

 そしてポツポツとお客がひと組、二組と入ってきて、わたしとその男の子との間には4人のお客が座り、少しだけ賑わってきていた。

 このバーは
『Bitch(ビッチ)《メス犬》』
 と、いう名前だけあって女性客が意外に多いのである。

 開店は午後7時から…

 その早い時間帯は、会社帰りのOL風が多く、そして徐々に遅い時間帯になるにつれ、二軒目、三軒目や、ナンパ目的の男性客がポツポツと現れ、更に深夜の時間帯になると、同伴アフターのキャバ嬢、仕事終わりのキャバ嬢や水商売風のお客が主流となる。

 そしてこの店長兼バーテンダーの彩ちゃんの、ドライでサバサバした応対がまた評判が良く、まあまあ繁盛していた。

 そして今夜は平日の午後10時…

 仕事帰りのOL風の女性客とカップルの二組のお客が、わたしとその男の子の間に座っていた。

 わたしが2杯目のカクテルを飲みながら、夕食代わりの『腸詰めウインナー』を食べていると…
 チラチラとこちら、つまり、わたしを見てくる彼の目に気付いたのである。

 あら、わたしを見てるわ…

 少しは気にしてくれているみたいね…

 だが…

 その男の子の目が、わたしを見てくる彼の目が…
 いつものナンパ目的の男達の目とは弱冠違うのを感じたのだ。

 なんだ、あの目は?…

 え、あ…

 か、観察?…

 わたしを観察しているみたい?…

 どちらかといえば、ナンパ目的のいつもの男達の目は…
 吟味、物色する感じの目であるのだが、彼の目は少し違う感じがしていた。

 そう…

 それは観察…

 まるで動物園や水族館等で、かわいい動物や魚、珍しい生き物を見ているような目…
 なんとなく、それに近い感じが伝わってくるのだ。

 さすがにわたしに対しては、かわいいはないであろうから…

 珍しい…なのだろうか?

 すると、さすが彩ちゃんである、そんなわたしの考えや、想いが伝わるのだろう…
 
「なんかぁ、悠里さんのウインナーの食べ方が…」
 
 いやらしいからですよぉ…

 と、笑いながら言ってきた。



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