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ソルティビッチ

第1章 ソルティビッチ…

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 あの駿くんと彩ちゃんとの衝撃の夜から約10日が過ぎ…

「ねぇ、悠里さん、駿くんと連絡してますか?」
 あの夜に、すっかり駿くんに心を射抜かれてしまった様な彩ちゃんが、わたしに訊いてきた。

「え…、あ、彩ちゃんが連絡してるんじゃないの?」

 彩ちゃんとわたしはあの朝に電話番号を交換したし…

 また逢いたいなぁ…

 またシたいなぁ…
 
 って、本当はそう想っていたのだが、それは今までの、ビッチとしてのわたしにとっての在り方に不本意な気持ちの為と…

 嬉々とした顔をして、また駿くんに逢う、誘う、電話する…

 それがなんとなく悔しいから…
 意地でもわたしからは連絡はしていなかったのだ。

 それにあの夜に、すっかり彩ちゃんの心とカラダが、駿くんに射抜かれた、みたいであったから…
 てっきり彩ちゃんが連絡を取っているものだとばかり思ってもいたのである。

 そしてその想いを彩ちゃんに伝えると…

「あ、はい、実はぁ、わたしすっかり駿くんにヤられちゃったんでぇ、悠里さんには悪いと思ったんですがぁ、こっそり電話したんですよぉ…」

 そんな彩ちゃんは、わたしの知る限りでは珍しい…

「だってぇ、あんなかわいい顔してるくせにぃ…」

 あのチンポとパワー、あり得ないじゃないですかぁ…
 
 わたしぃ、あれ以来駿くんを想い出すと、疼いちゃってぇ…
 と、珍しく恥ずかしそうな顔をして言ってきた。

「だから、何回か電話したんですがぁ…」

 全然出てくれなくてぇ…

「折り返しの電話も無いんですよぉ」
 と、恥ずかしそうな…
 そして少し悔しそうな顔をしながら呟いてきたのだ。

 確かに、彩ちゃんは美人の類いであり、バイセクシャル特有な妖しい魅力、匂いを醸し出しているからなのか…
 男性、女性の両方からモテる。

 この『バーBitch(ビッチ)』の常連客の女性の中には彩ちゃん目当てのお客も多々いるくらいであるから…

 だからそんなモテる女のプライドが、駿くんの電話スルーの悔しさにも通ずるのだと…
 わたしには思われた。

 そしてわたしも似たようなつまらない女のプライドで駿くんに連絡をしてない訳でもあるから…

「ふうん、折り返しも無いんだぁ?」

「だから悠里さんにはあるのかなぁって?」

「もしかしたらわたしたちフラれちゃったのかなぁ?」
 


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