お人好しは何かと巻き込まれる
第6章 ヴァンパイアの気まぐれ
「お願い!助けてください!!」
必死の形相で駆け込んで来たのは
ルシアリアとさほど年の変わらなそうな
この村では見かけない少女だった。
「そんなに慌てて一体何事ですか?」
教会にいた神父が少女を心配し駆け寄る。
ルシアリアもただ事ではないと感じ一緒に
いた子供達を奥の部屋に避難させる。
「私、ノース町の領主の娘のライラって
いいます。最近、町にヴァンパイアが
現れて人々を襲い始めて……
止めて欲しかったら領主の娘の私を
生贄に渡せって言ってきて…」
目にいっぱい涙を貯めて悲痛な叫びで訴える。
「町のギルドは冒険者を派遣するまで
言われるとおりにしていてくれって
助けてくれなくて…ヴァンパイアに
引き渡される日はもう、明日なのに…
…恐くて、耐えられなくて…」
そこに誰もが凍りつくような冷たい
声が響いた。
「おやおや、取引の娘が町を出たから
逃げるのではと思って追いかけてみれば
案の定ですね」
誰も気付かないうちに教会の中に
一人のヴァンパイアが静かな笑顔を携え
入り込んでいた。