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はい。もしもし、こちら、夫婦円満本舗です。

第32章  『旧レイン邸宅にて』



まぁ確かに騙されていた夫である
伊藤雄介と派遣時代に森園のせいで
不利益を被った前嶋と小林のふたりが
ここに居るのは森園自身にも
理解はできるし納得は出来るだろうが。

今日、初めて顔を合わせた僕が
どうして当然の様にここに居るかは
森園自身には…わからないことで。

『森園美海さん…、いえ…今は
伊藤美海さんと…お呼びした方が
いいでしょうか。私はそちらの
おふたりからご依頼を受けまして
伊藤美海さん…あなたの身辺調査を
させて頂いた興信所の者です』

本来……調査対象に自分から
名乗り出たりはしないのだが
夫婦円満本舗の茂木仁と
名乗るよりも、今は…興信所の探偵と
名乗る方が…自然で違和感がないし
その後に森園が僕の事をどこかのSNSで
悪評を垂れ流そうが不利益がないと
咄嗟に判断して言ったことで。

まぁ全部が全部真実ではないとは言え
森園美海の依頼に関しては
あながちそれも嘘ではないから。

先頭を歩いていた
伊藤雄介が1枚のドアの前で足を止めた。

その木製のアンティーク調なドアには
STAFFONLYのプレートが掛かっていて
ゲストが間違えてドアの向こうに
入らない様に配慮してくれていた。



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