はい。もしもし、こちら、夫婦円満本舗です。
第32章 『旧レイン邸宅にて』
遊亀美月の言葉や声のトーンよりも
森園に対して向けていている
視線の…方が更に…温度が
低くて鋭いのは…ここで
見守っている僕にも…感じられるほどで。
「なら……、私は…貴女に対して
遠慮する必要はないと…判断しました。
茂木さん。……後は卯月先生に
私はお任せしたいと思います…」
そう…遊亀美月がこちらに
森園美海への尋問と言うか
聞きたいことは全て聞けたと
言う感じで声を掛けて来たので。
『真奈美ちゃん…。
あっちに一本連絡してくれる?
あっちの役者の揃い具合を大至急
確認し…欲しいんだけど』
僕の言葉に遊亀美月に
付き添うようにして隣に立っていた
真奈美ちゃんがスマホを取り出して
電話を掛けながら部屋から出て行って。
会議室のような室内には、
僕と…遊亀美月…伊藤雄介
そして森園美海の4人だけになる。
「なんで…私…なの?
…まーくんはっ…他の女ともッ…」
そういう関係に…あった女が
自分だけじゃないと言いたいのだろう。
自分だけが遊亀正樹の妻から
浮気を責められるのが理解できないと
言いたげに小声でぶつぶつと
不満を自分の中にしまいきれてなくて
さっきから独り言として零れ出ている。
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