いつか、絶望の底から救い出して…
第6章 Mの正体
「俺がMって誰から聞いたんですか……!」
か細い声だがその中にはわずかな憎悪が含まれている。
おそらく、自分をMとバラした人間への憎悪だろう。
真渕先生はそんな舞希に、少し怯えた様子だったが、軽く咳払いをすると話し始めた。
「瀬尾隆道さんですよ」
「せ、瀬尾さんが……!」
瀬尾と言うワードに、舞希の目が大きく見開かれた。
豆鉄砲を食らったような表情で、真渕先生を見つめる舞希。そんな舞希に、真渕先生は言葉を続けた。
「瀬尾さんが昨日電話で教えてくれたんですよ。佐久良舞希と言う人物はMだから貴方の工房で雇ってくださいと。報酬は出しますと」
「──ッッ!!」
その言葉にアタシと舞希は絶句した。
口をポカンと開けたまま固まるアタシと、俯きながらブツブツと何かを呟いている舞希。
それは微かに聞こえる声だった。
「ざけんな……瀬尾……っ!」
堪えるような、堪えるような、それでいて怒りを感じさせる声色だった。