いつか、絶望の底から救い出して…
第5章 一本の電話
「んあ……」
アタシは携帯の着信音に叩き起こされた。
せっかくの安眠を妨害して来た相手にイラつきながら枕元にあったスマホを手繰り寄せる。
「誰よ……」
苛立ちを隠す事なくディスプレイを確認する。
「え!? 絵描き工房から!?」
それは職場である絵描き工房からだった。
え?まだ朝の八時半だよね!? こんな早くになんだろう……
いつも絵描き工房から十時から始まる。
こんなに早く電話してくることなんてまず無い。
「なんなんだろう……」
もしかして、まだアタシを追い詰める気?
なんて一瞬だけど思ってしまった。
本当は出たくないけど……
でも出るしかないよね?
アタシは出たくない気持ちを唾と一緒に飲み込むと、応答ボタンを押した。