
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第6章 契り
「確かに、そなたの言うことはもっともでしょうね。国王殿下もその辺りは実はよくご存じでいらっしゃいます。殿下の取り巻きは、皆、下級貴族出身の者ばかりかと言うと、意外にそうでもないのですよ。殿下のご幼少の頃からの友でもあり、信頼のおける臣でもある吏曹参知(イエジヨチヤムチ)の孫(ソン)東善(ドンソン)は孫大監の孫になります。孫大監といえば大妃さまを頂く保守派の急先鋒ですからね。孫大監はかねてから、ご自分の跡目を継ぐべき嫡孫が改革派に属しているのを苦々しく思っておいでなのです。ですが、吏曹参知と殿下の絆は長年の親交によって培われたもので、あのお二人は身分を超えて親しく友人として付き合っておられます。吏曹参知は殿下のおんためなら、歓んで燃え盛る焔の中にでも飛び込んでゆくでしょう。それほどの忠誠心を殿下に対して持っている方です」
「それでは、尚宮さまは何ゆえ、私に孫大監の養女になれと―」
莉彩には全く話が読めない。困惑する莉彩に、淑妍は微笑んで見せた。
「有り体に言いますと、そなたに殿下がいずれ理想どおりの政を行うための突破口になって貰いたいのです。そなたが孫大監の養女になることで、殿下と孫大監は強い絆で結ばれる。そのことは、殿下の夢を実現するためには大いに役立つはずですよ。孫大監が殿下側につくことで、保守派が独占している朝廷人事に風穴を開けることができますから」
「では、尚宮さまは私に、その風穴になれと仰せになるのですね」
「そのとおりです。孫大監は最近、揺らいでいます。元々、可愛がっている孫が殿下寄りなのです。そなたは知らないでしょうけれど、孫大監は一人息子を早くに病で喪い、息子の忘れ形見である吏曹参知を溺愛しています。その可愛くて仕方のない孫が殿下の片腕、懐刀と呼ばれる忠臣ですからね、少し後押してやれば、直にこちら(保守派)に靡くことでしょう。あの大物の大監をこちらに上手く引き入れられれば、保守派などひとたまりもありません。大妃さまは、野心だけはおありですけれど、政治については何もご存じない。保守派は脚許を掬われ、一網打尽となるでしょう」
淑妍の面に意味ありげな笑みが浮かんだ。
「そして、ここからが本題です」
意外な言葉に、莉彩が眼を瞠る。
淑妍が〝もう一杯、お茶のお代わりをお願いできますか〟と湯呑みを差し出した。
「それでは、尚宮さまは何ゆえ、私に孫大監の養女になれと―」
莉彩には全く話が読めない。困惑する莉彩に、淑妍は微笑んで見せた。
「有り体に言いますと、そなたに殿下がいずれ理想どおりの政を行うための突破口になって貰いたいのです。そなたが孫大監の養女になることで、殿下と孫大監は強い絆で結ばれる。そのことは、殿下の夢を実現するためには大いに役立つはずですよ。孫大監が殿下側につくことで、保守派が独占している朝廷人事に風穴を開けることができますから」
「では、尚宮さまは私に、その風穴になれと仰せになるのですね」
「そのとおりです。孫大監は最近、揺らいでいます。元々、可愛がっている孫が殿下寄りなのです。そなたは知らないでしょうけれど、孫大監は一人息子を早くに病で喪い、息子の忘れ形見である吏曹参知を溺愛しています。その可愛くて仕方のない孫が殿下の片腕、懐刀と呼ばれる忠臣ですからね、少し後押してやれば、直にこちら(保守派)に靡くことでしょう。あの大物の大監をこちらに上手く引き入れられれば、保守派などひとたまりもありません。大妃さまは、野心だけはおありですけれど、政治については何もご存じない。保守派は脚許を掬われ、一網打尽となるでしょう」
淑妍の面に意味ありげな笑みが浮かんだ。
「そして、ここからが本題です」
意外な言葉に、莉彩が眼を瞠る。
淑妍が〝もう一杯、お茶のお代わりをお願いできますか〟と湯呑みを差し出した。
