
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第8章 いつか、きっと
莉彩がこの時代にとどまり続ける限り、大妃は莉彩をしつこく狙い、徳宗は気の休まる暇もないだろう。
だが、莉彩はそんなことを望んではいなかった。
徳宗の頬を流れ落ちるひとすじの涙を見ながら、莉彩は、はっきりと悟ったのだ。
やはり、私は殿下のお歩きになる道の妨げとなる。
その事実を認めるのは辛いことだった。
でも、徳宗のためなら、たとえこの生命を投げ打っても良いと思っているこの身だから、自分がここにいることが徳宗の進む道の妨げとなるのなら、哀しくても身を退く覚悟はできた。
叶うことなら、徳宗と二人でずっとずっと生きてゆきたかった。毎朝、二人で南園を散策し、鳥の囀りや風が樹々の梢を揺らす音に耳を傾けていたかった。徳宗となら、他愛ないことでも何でも話していて愉しかったし、何を話すでもなく寄り添い合っていてさえ、その静けさを心地良いと思えた。
どうして、私はこの時代のこの国に生まれなかったのだろう。
どうして、彼が五百六十年前の朝鮮国王でなければならなかったのだろう。
どうして、はるかな時を隔てて、けしてめぐり逢うはずのない私と彼がめぐり逢ってしまったのだろう。
別れるために出逢い、出逢ってはまた別れる宿命なんて、あまりにも哀しすぎる。
出逢えただけでも良かっただなんて、嘘だ。
本当は離れたくない。ずっといつまでも彼といたい。彼の側にいたい。
でも、私が彼の側にいたら、彼は聖君と呼ばれる立派な国王にはなれない。大妃が私を傷つけようとすれば、彼はその玉座さえ投げ出してしまうかもしれない。
―そんなのはいや。
私は彼に、後世まで名を残すような英明な君主になって欲しい。
だから、私は自分からいなくなろう。
彼の進む道がいつも輝かしいものであることを祈りながら、はるかな時を隔てた遠い場所で生きてゆこう。
一生に一度きり、大好きになった男と過ごした日々は、私の生涯の宝物になるに違いないから。
莉彩の眼から大粒の涙が溢れ、とめどなく頬を流れ落ちる。その瞳には強い決意の色が浮かんでいた。
だが、莉彩はそんなことを望んではいなかった。
徳宗の頬を流れ落ちるひとすじの涙を見ながら、莉彩は、はっきりと悟ったのだ。
やはり、私は殿下のお歩きになる道の妨げとなる。
その事実を認めるのは辛いことだった。
でも、徳宗のためなら、たとえこの生命を投げ打っても良いと思っているこの身だから、自分がここにいることが徳宗の進む道の妨げとなるのなら、哀しくても身を退く覚悟はできた。
叶うことなら、徳宗と二人でずっとずっと生きてゆきたかった。毎朝、二人で南園を散策し、鳥の囀りや風が樹々の梢を揺らす音に耳を傾けていたかった。徳宗となら、他愛ないことでも何でも話していて愉しかったし、何を話すでもなく寄り添い合っていてさえ、その静けさを心地良いと思えた。
どうして、私はこの時代のこの国に生まれなかったのだろう。
どうして、彼が五百六十年前の朝鮮国王でなければならなかったのだろう。
どうして、はるかな時を隔てて、けしてめぐり逢うはずのない私と彼がめぐり逢ってしまったのだろう。
別れるために出逢い、出逢ってはまた別れる宿命なんて、あまりにも哀しすぎる。
出逢えただけでも良かっただなんて、嘘だ。
本当は離れたくない。ずっといつまでも彼といたい。彼の側にいたい。
でも、私が彼の側にいたら、彼は聖君と呼ばれる立派な国王にはなれない。大妃が私を傷つけようとすれば、彼はその玉座さえ投げ出してしまうかもしれない。
―そんなのはいや。
私は彼に、後世まで名を残すような英明な君主になって欲しい。
だから、私は自分からいなくなろう。
彼の進む道がいつも輝かしいものであることを祈りながら、はるかな時を隔てた遠い場所で生きてゆこう。
一生に一度きり、大好きになった男と過ごした日々は、私の生涯の宝物になるに違いないから。
莉彩の眼から大粒の涙が溢れ、とめどなく頬を流れ落ちる。その瞳には強い決意の色が浮かんでいた。
