
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第9章 MooN Light
「どうして、私がここに?」
莉彩の問いに、淑妍は婉然とした笑みを刻む。
「さる者があなたをここにお連れしたのですよ」
「さる者―?」
「それは、いずれ明らかになりましょう。それよりも、淑容さま、このお子は一体」
と、視線だけ動かし、聖泰を見つめる。
今は淑妍の視線が、疑問が莉彩には重たかった。
タイムトリップの予感を憶えた時、この子の手を掴んだことは結果として正しかったのかどうか。ここに至り、莉彩は初めて後悔した。
この時代に再び来れば、当然、淑妍にも逢う可能性はあった。淑妍が聖泰を見て、どう思うか。想像しただけで、怖ろしい。
「この子の着ていた服はとりあえず、こちらのものに着替えさせました。あのようななりでは、誰に怪しまれぬとも限りませぬから」
莉彩が応えないのにも淑妍は追及せず、全く違うことを言った。更に淑妍は莉彩を愕かせることを言う。
「あなたをここに連れてきたのは、布商人です」
「布―商人」
呟き、莉彩はあっと口許に手を当てた。
初めてこの時代に飛んだその日、出逢った小柄な老人を思い出す。まるで山奥にひっそりと暮らす隠者を彷彿とさせるような老人だった。たっぷりとした顎髭とふさふさした眉は真っ白で、皺に埋もれた細い眼は穏やかな光を宿していたが、時に異様なほどの鋭さが閃く。
観相もすると語っていた老人は、布を商う商人だと自ら語っていた。
「その者から文(ふみ)を預かっています」
淑妍は懐から一通の書状を取り出すと、そっと差し出す。莉彩は震える手でそれを受け取った。
縦長の和紙でできた封筒を開くと、中から一枚の紙が出てきた。莉彩は夢中でそれに視線を走らせた。
莉彩の問いに、淑妍は婉然とした笑みを刻む。
「さる者があなたをここにお連れしたのですよ」
「さる者―?」
「それは、いずれ明らかになりましょう。それよりも、淑容さま、このお子は一体」
と、視線だけ動かし、聖泰を見つめる。
今は淑妍の視線が、疑問が莉彩には重たかった。
タイムトリップの予感を憶えた時、この子の手を掴んだことは結果として正しかったのかどうか。ここに至り、莉彩は初めて後悔した。
この時代に再び来れば、当然、淑妍にも逢う可能性はあった。淑妍が聖泰を見て、どう思うか。想像しただけで、怖ろしい。
「この子の着ていた服はとりあえず、こちらのものに着替えさせました。あのようななりでは、誰に怪しまれぬとも限りませぬから」
莉彩が応えないのにも淑妍は追及せず、全く違うことを言った。更に淑妍は莉彩を愕かせることを言う。
「あなたをここに連れてきたのは、布商人です」
「布―商人」
呟き、莉彩はあっと口許に手を当てた。
初めてこの時代に飛んだその日、出逢った小柄な老人を思い出す。まるで山奥にひっそりと暮らす隠者を彷彿とさせるような老人だった。たっぷりとした顎髭とふさふさした眉は真っ白で、皺に埋もれた細い眼は穏やかな光を宿していたが、時に異様なほどの鋭さが閃く。
観相もすると語っていた老人は、布を商う商人だと自ら語っていた。
「その者から文(ふみ)を預かっています」
淑妍は懐から一通の書状を取り出すと、そっと差し出す。莉彩は震える手でそれを受け取った。
縦長の和紙でできた封筒を開くと、中から一枚の紙が出てきた。莉彩は夢中でそれに視線を走らせた。
