
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第3章 接近~近づいてゆく心~
【接近~近づいてゆく心~】
王は光徳君(カンドククン)と呼ばれた幼少の砌より、誰からも愛される子どもだった。成人した現在も朗らかな性格と親しみやすい人柄で知られている。
身分に囚われない人材の登用にも積極的で、商人や農民のための学問所を町中に設け、更にある年には試験的に科挙(官吏になるための試験、登竜門)の受験資格をひろげ、両班の子弟だけでなく庶民にも受験資格を与えた。その場合、両班の推薦状を必要とするという条件付きではあったが、王朝始まって以来のこの試みは実に画期的なものとして、民衆からは大いに歓迎された。
大臣といった高級官僚だけでなく、下級官吏にも気さくに声をかけ、その意見には真摯に耳を傾け、正すべきところは正した。そのため、初代の王から朝廷において重きをなしてきた名門の人々よりは、下級貴族や下級役人といった人々からの絶大な人気と支持を集めている。
が、一方、王のその姿勢が余計に大妃の苛立ちと憎しみを募らせ、二人の間の溝を深くしている。大妃同様、権門家である高官もまた、若い王の革新的なやり方には眉をひそめていた。彼等の立場からすれば、至極当然であったろう。何しろ、長らく安穏と享受し続けてきた利を下々の者に奪われる危険が出てきたのだから。
同じ貴族においても、下級官吏になれるのが関の山の家柄と、代々、大臣を輩出してきた名門と実に様々だ。これまで上の者は下の者を歯牙にもかけてこなかった。それが、王の気紛れ―だと彼等は少なくとも受け止めている―で、長きに渡って守ってきた権力を失い、下の者に取って代わられる怖れに脅かされるようになったのだ。
自身も大臣の娘である王の義母金大妃は、古くからの名家から重臣、廷臣を選ぶべきだという確固たる信念を抱いていた。当然、自分たちの利を維持しようと躍起になる大臣と大妃は自ずと寄り添い合い、同じ派閥を作るようになる。
その結果、王を中心に下級官吏、もしくは下級貴族出身の廷臣たちが革新派を形成し、大妃を筆頭とする保守派と共に二大勢力として朝廷が分裂してしまった。
両者の対立は眼に見える形ではないが、水面下で権力を巡っての熾烈な争いが繰り広げられている。
王は光徳君(カンドククン)と呼ばれた幼少の砌より、誰からも愛される子どもだった。成人した現在も朗らかな性格と親しみやすい人柄で知られている。
身分に囚われない人材の登用にも積極的で、商人や農民のための学問所を町中に設け、更にある年には試験的に科挙(官吏になるための試験、登竜門)の受験資格をひろげ、両班の子弟だけでなく庶民にも受験資格を与えた。その場合、両班の推薦状を必要とするという条件付きではあったが、王朝始まって以来のこの試みは実に画期的なものとして、民衆からは大いに歓迎された。
大臣といった高級官僚だけでなく、下級官吏にも気さくに声をかけ、その意見には真摯に耳を傾け、正すべきところは正した。そのため、初代の王から朝廷において重きをなしてきた名門の人々よりは、下級貴族や下級役人といった人々からの絶大な人気と支持を集めている。
が、一方、王のその姿勢が余計に大妃の苛立ちと憎しみを募らせ、二人の間の溝を深くしている。大妃同様、権門家である高官もまた、若い王の革新的なやり方には眉をひそめていた。彼等の立場からすれば、至極当然であったろう。何しろ、長らく安穏と享受し続けてきた利を下々の者に奪われる危険が出てきたのだから。
同じ貴族においても、下級官吏になれるのが関の山の家柄と、代々、大臣を輩出してきた名門と実に様々だ。これまで上の者は下の者を歯牙にもかけてこなかった。それが、王の気紛れ―だと彼等は少なくとも受け止めている―で、長きに渡って守ってきた権力を失い、下の者に取って代わられる怖れに脅かされるようになったのだ。
自身も大臣の娘である王の義母金大妃は、古くからの名家から重臣、廷臣を選ぶべきだという確固たる信念を抱いていた。当然、自分たちの利を維持しようと躍起になる大臣と大妃は自ずと寄り添い合い、同じ派閥を作るようになる。
その結果、王を中心に下級官吏、もしくは下級貴族出身の廷臣たちが革新派を形成し、大妃を筆頭とする保守派と共に二大勢力として朝廷が分裂してしまった。
両者の対立は眼に見える形ではないが、水面下で権力を巡っての熾烈な争いが繰り広げられている。
