
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第3章 接近~近づいてゆく心~
かねてからの王と大妃の母子仲の悪さが更にその政治的な対立に拍車をかけていた。
身分に拘らぬ明朗な君主として知られる徳宗ではあったが、王が時折かいま見せる昏い表情に一体、何人の者が気付いていただろうか。
燦々と輝いていた太陽がすうっと厚い雲に隠れるように、そんなときの王の瞳は底なしの沼のように虚ろで、横顔は拭い去りがたい孤独に縁取られていた。その微妙な変化に気付いていたのは、かつて王の乳母を務めた臨尚宮だけであった。
あれほど多くの廷臣に取り巻かれていながら、王の苦悩と孤独に誰もが気付かない。大臣たちは王の上辺しか見てはいないのだ。
大殿付きの劉尚宮から厳しい
身分に拘らぬ明朗な君主として知られる徳宗ではあったが、王が時折かいま見せる昏い表情に一体、何人の者が気付いていただろうか。
燦々と輝いていた太陽がすうっと厚い雲に隠れるように、そんなときの王の瞳は底なしの沼のように虚ろで、横顔は拭い去りがたい孤独に縁取られていた。その微妙な変化に気付いていたのは、かつて王の乳母を務めた臨尚宮だけであった。
あれほど多くの廷臣に取り巻かれていながら、王の苦悩と孤独に誰もが気付かない。大臣たちは王の上辺しか見てはいないのだ。
大殿付きの劉尚宮から厳しい
