
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第1章 邂逅~めぐりあい~
眼の前で両手を合わせ懇願されると、〝うん、いいよ。私は特に何もないから〟と笑顔で応えてしまう自分がちょっと情けない。
慎吾に言わせれば、〝それが莉彩の良いところなんだよ、気にするな〟と慰めてはくれるのだが、この主体性のない性格を少しは直したいと思っている莉彩だった。
その頼まれると断り切れないというノリでつきあい始めてしまったといえば、慎吾にはあまりに失礼だし申し訳ない。しかし、完全にそうではないと言い切れないところが、辛いところだ。
つまり、だ。莉彩は慎吾を顔を見るのも厭というわけではないから、頼まれて付き合い始めたが、結局のところ、彼氏だとか恋人だとかいう自分にとっての特別な存在だと思っているわけではない。―と、結論はこうなる。
その気持ちはこの三年の間も変わらなかった。莉彩としては、むしろ変わってくれた方が良かったのだ。だって、今のままの中途半端な気持ちでは、あまりに慎吾に申し訳ないではないか。付き合い始めた当初は、莉彩だって、いつかは慎吾を好きになれると思っていた。
いや、今だって慎吾のことを好きだ。でも、その〝好き〟は女友達の泰恵や遥香に対するのと全く同質のもので、慎吾に向ける想いが恋情だとは到底思えなかった。恐らく、それは慎吾の望む〝好き〟ではないだろう。
いっそのこと、慎吾に他の好きな女の子が現れれば、莉彩は気が楽なのに。なんて考えてしまう自分は、とんでもない卑怯者に違いない。自分が悪者になりたくなくて、慎吾に別の子に眼を向けて欲しいと願っている。
慎吾に真実の気持ちを伝えなければと思いながら、莉彩はついつい言えずじまいでいた。莉彩と同じ地元のY中学を卒業した後、慎吾は仲間と別れ、たった一人、私立のS高校に進学した。S高校は付属の大学もある名門男子校で、高校の野球部は毎年のように甲子園に出場し、全国大会でも何度か優勝を飾っている強豪だ。現在、慎吾は毎日往復四時間かけてS高まで通っているが、大学入学後は近くに下宿すると聞いている。
毎日遅くなるまで部活に明け暮れ、電車に揺られてY町の自宅に辿り着く頃には午後八時を回っていることが多いという。それでも愚痴や弱音一つ零さず、学校の成績も常にトップクラスだという慎吾。
慎吾に言わせれば、〝それが莉彩の良いところなんだよ、気にするな〟と慰めてはくれるのだが、この主体性のない性格を少しは直したいと思っている莉彩だった。
その頼まれると断り切れないというノリでつきあい始めてしまったといえば、慎吾にはあまりに失礼だし申し訳ない。しかし、完全にそうではないと言い切れないところが、辛いところだ。
つまり、だ。莉彩は慎吾を顔を見るのも厭というわけではないから、頼まれて付き合い始めたが、結局のところ、彼氏だとか恋人だとかいう自分にとっての特別な存在だと思っているわけではない。―と、結論はこうなる。
その気持ちはこの三年の間も変わらなかった。莉彩としては、むしろ変わってくれた方が良かったのだ。だって、今のままの中途半端な気持ちでは、あまりに慎吾に申し訳ないではないか。付き合い始めた当初は、莉彩だって、いつかは慎吾を好きになれると思っていた。
いや、今だって慎吾のことを好きだ。でも、その〝好き〟は女友達の泰恵や遥香に対するのと全く同質のもので、慎吾に向ける想いが恋情だとは到底思えなかった。恐らく、それは慎吾の望む〝好き〟ではないだろう。
いっそのこと、慎吾に他の好きな女の子が現れれば、莉彩は気が楽なのに。なんて考えてしまう自分は、とんでもない卑怯者に違いない。自分が悪者になりたくなくて、慎吾に別の子に眼を向けて欲しいと願っている。
慎吾に真実の気持ちを伝えなければと思いながら、莉彩はついつい言えずじまいでいた。莉彩と同じ地元のY中学を卒業した後、慎吾は仲間と別れ、たった一人、私立のS高校に進学した。S高校は付属の大学もある名門男子校で、高校の野球部は毎年のように甲子園に出場し、全国大会でも何度か優勝を飾っている強豪だ。現在、慎吾は毎日往復四時間かけてS高まで通っているが、大学入学後は近くに下宿すると聞いている。
毎日遅くなるまで部活に明け暮れ、電車に揺られてY町の自宅に辿り着く頃には午後八時を回っていることが多いという。それでも愚痴や弱音一つ零さず、学校の成績も常にトップクラスだという慎吾。
