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冴ゆる月(Winter moon)

第6章 手コキ…

 手コキ①

 よぉく、写真を見て選んだ筈だったのに…

「いらっしゃいませ………あっ…」
「あっ…」
 目の前に現れた彼女は…
 高校時代に憧れていた一つ上の先輩だった。

「あ…だよね…」
「は、はい…す、すいません、気付かなかったです…」 

 見た目の印象も、雰囲気も変わっていないのに…
 よく写真を見てじっくりとタイプの女の子を選んだ筈なのに…
 本当に気付かなかったのだ。

「チ、チェンジ…するよね?…」
 先輩はそう訊いてきた…
 ここは『手コキ専門』の安い優良風俗店。

 アルバム写真を見て女の子を選び、個室で手コキをしてもらうシステム…
 一応、女の子はキャミソールとショーツというスタイルであるが、ルール上は脱がない決まりとなっていた。

 ただこの前指名した女の子によると、チップ次第によっては脱ぐし、リップサービスもする…
 『ただし内緒でね』と、言っていた。

 だが、貧乏大学生の僕はそんなお金の余裕もなく、手コキのみであった…
 でも、童貞の僕にはそれだけでも十分に満足できていたのである。

 自分でするよりは…
 それだけでも感激モノなのだ。

「じ、じゃ、チェンジ頼んでくるわね」
「あっ、い、いや…」
 僕は、彼女を制した。

「え…、だって…」
「も、もしも、イヤじゃなかったら…」
「う、うん、い、イヤでは…ないけど……」
「だ、だったら…」
 と、いうことで二人でプレイルームに入る。

 実は…
 こんなことが言えるなんて…
 と、自分でも驚いていた。

 だけど、直ぐに後悔してしまった…
 なぜなら、彼女がイヤなんじゃないかと…
 自分がよくても彼女がイヤに…
 高校の先輩、後輩なんだから嫌に決まってる…
 自己嫌悪に陥ってしまう。

 だから、いつまでもモテないんだ…
 だから、未だに童貞なんだ…

「じゃあ、ここに脱いで、寝て…」
 そんな想いをよそに、先輩は淡々と仕事を始めてくる。

 そう、先輩にとってはただの仕事なのだ…



「あ…う、うん…」
 パンツを脱ぎ、股間を手で隠してベッドに横になった。

 すると、急激に羞恥心が湧き起こってくる…

「あら…元気…ね…」
 しかしそんな羞恥心とは真逆で、アレはビンビンに勃ってしまう。

 そして彼女のその呟きは…
 こんな状況でも勃つんだねと、聞こえた気がした。

 


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