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冴ゆる月(Winter moon)

第6章 手コキ…

  手コキ②

 あぁ最悪だ…
 やっぱりチェンジすれば良かった…

「でも良かったわ…」
 するとそんなことを言ってきた。
「えっ?…」
 良かったって、なんだ?…

「だって…」
 先輩曰く…
 こんな風俗だから金払うから『脱げ』『しゃぶれ』『やらせろ』等は日常茶飯事なのだそうだ…

「お店もさぁ、わたし達が騒がなければ暗黙っていうかぁ…」
 リップサービスや本番が無いからアルバイトしているのに…
 ボソッと先輩は呟く。

「だから少し嫌だけど、かなり安心…」
 と、微笑みながら言ってきた。

 あ、この笑顔…
 高校時代に憧れていた笑み。

「じゃあ…」
 そう言いながらたっぷりのローションで手コキを始めてくる。

 ヌチャ、ヌチャ、ヌチャ…

「あっ、うっ…あぁ………」
 そして僕は…

 あっという間にイッてしまう…

「あらぁ…」
 その『あらぁ』の裏には『もう、こんなに速く…』の言葉が隠されている様に聞こえてきた。

「うふ、なんか…」

 なんかって?…

「なんか、かわいい…」
 彼女は濡れティッシュで後始末をしてくれながらそう呟く。

「相変わらずね…」

 あちゃぁ…
 そして昂ぶりの終息と共に羞恥心がぐんぐんと湧き起こってきた。

 やっぱりチェンジすればよかった…
 後悔、先に立たず…
 いや、先に勃たずか…
 そして自虐してしまう。

「いいわよ、あの頃と同じ値段で…」
 すると先輩は笑いながらそう言ってきた。

「え?…」

 すると、あの頃…
 高校時代の記憶が蘇ってきたのである。

『あらあら、もう出ちゃったのぉ…』
『あ、は、はい…』
『ま、わたしは楽でいいけどねぇ』
『あ、は、はい…これ5000円…』
『うーん、3000円でいいわよ』
『え…』

『だってぇ、こんな秒でイッちゃったんじゃぁ、なんか5000円貰い辛いしぃ…
 まけてあげるわよ…』

 あの頃…も…
 高校時代の先輩は、昼休みに未使用の体育道具置き場を使ってこっそり…
『5000円手コキ』のバイトをしていたのである。

「なんか懐かしいわね…」

 僕は返す言葉が無かった…

「またね…」

 そして先輩は…

 あの頃と…

 あの高校時代と同じ様に、そう声を掛けてくれた…

 次は…
 次こそは…

『5000円じゃ、足らないわ』って、云わせてやる…



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