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らゔぃあん☆ぴーち!

第4章 あ

家の中に入り
桃に手渡されたタオルで髪を拭きながらダイニングテーブルに座る。
みんな自分の部屋に入っているらしく私と桃の二人だけ。

「はい、どうぞ」
「わー……ありがとう」

目の前に置かれたのはマグカップに入った紅茶。
誰かが淹れてくれたお茶を飲むのは久しぶりだ。
蜂蜜をたっぷり入れて一口。

「おいしーい……」
「良かった。夏だけど体は冷やさないほうがいいものね」
「ありがとう桃。元気出た」

桃はにっこり笑いながら頷いて
その優しい表情のまま

「元気、なかったの?」
「え?あ、違う違う、もっと元気が出たって意味」

紫苑に劣等感を感じてへこんでたとか
カッコ悪くて言えたもんじゃない。

「朱音ってすごいね。窓から見てたの。五分、十分ってずっと続けてるから、すごいなあって。ぽつぽつ雨が降り出しても、乱れないんだもの。なんだかジーンとしちゃった」
「あはは。見られてたなんて、恥ずかしいな」
「毎日ああやってお庭で練習してるの?」
「ううん、毎日じゃないよ。基本的に部活があるからね。家では精神統一したい時にする感じ」
「そっか」

桃は少し黙って
そして

「精神統一したい時、いっぱいあったんだろうね」
「うん?」
「リビングのキャビネットに飾ってある、朱音が今までにもらったたくさんのトロフィーとかメダルとか、見たよ。あんなに強くなるくらい、小さい頃からいっぱい練習したんだよね。きっといっぱい、精神統一したい時があったんだよね」
「……」
「すごく、頑張ったんだよね」

負けず嫌いだっただけだよ
笑ってそう言いたかったけれどうまく笑えなそうで
ただ首だけ横に振って紅茶を飲んだ。

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