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黒猫と白薔薇

第1章 淡い日常

その後――部屋をくるくると歩き回り「これなに?」と毎回興味津々で聞いてくる。仕事だと言い聞かせながら、淡々と教える毎日。


 もしも断ったら、他の白薔薇の騎士たちに睨まれるからである。もつひとつは――八代にまで伝わったら、恐ろしい長文の文よこすとか水鏡を通して説教でもされそうだ。



「ねえ暁。これは?」

「童話の本だな」

「童話?」

「子どものための物語だ」

「へえー」

「八代の子どもたちの仕業か……はあ」


 八代――自分の住む国を治める長で、容赦ない性格だ。3人子どもがいて、その子どもたちがまあ癖が強い。おそらくイタズラでこっそり忍ばせたかもしれない。


 子ども向けの物語が何冊かある。異国の物語や暁の国で有名な物語――あいつら八代に似て、読書の鬼だからな……。何部屋あるか知らないくらい本だけの部屋があるくらいだ。




 懐かしそうに眺めてると少女が全部取り出し、それを抱いたまま満面の笑みでこう言い放った。


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