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素敵な飼い主様

第8章 地獄という名の日常





「紫苑」


「・・・っ」


久しぶりに聞いた、あの優しい声色で呼ぶ”紫苑”。


まるで金縛りにあったかのように動けない。



何度、聞きたいと思ったか。
何度、帰りたいと思ったか。




涙で霞んだ視界、椎名様はうつらない。



彼しか、目にうつっていない。



「紫苑」



戻って来いも、何も言わないけれど。


その声に、姿に、吸い込まれそうになる。




ただ、自分の名前がこんなにも特別だと感じたことも、初めてだった。







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