素敵な飼い主様
第8章 地獄という名の日常
「紫苑!」
椎名様が、我を失ったかのようにあたしの前に来て、名前を呼ぶ。
「お願いだ、俺には紫苑が必要なんだ・・・!スミレは愛していない。紫苑しかいないんだ」
「・・・・・・」
同じ名前なのに、特別に聞こえない。
どうしてだろう。
・・・いや、それは分かりきっていることだ。
だって、身体は正直。
そうでしょう?
「神矢」
こんなにも、彼の名前を呼ぶだけで、心臓が小鳥のように動くんだもの。
「し、しお・・ん」
絶望的な顔をした椎名様は、ふら・・・とよろめいた。