革靴を履いたシンデレラ
第3章 階下の秘め事*
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会場に戻ったシンデレラが見たものは、まるで何事も無かったかのように知らない男と談笑しているリーシャだった。
年かさの男が彼女の腰を抱いていた。
『伯爵とリーシャお嬢様ね』
『まあ仲睦まじいこと』
周りからのそんな声が耳に入る。
(父親が視力の代わりをしているのだろう)
それでも、リーシャの様子はあの部屋で過ごした女性と同じとは思えない。
シンデレラと目が合ったリーシャは、その乏しい表情から一瞬だけ光を取り戻したかのように見えた。
だが彼女はすぐに目を逸らした。
そしてそれから二度と彼を視界に入れることは無かったのだった。
舞踏会の帰り際、アンリはご機嫌だった。
「シンデレラ、良かったわねえ。 他の家からのお誘いも色々いただいたんでしょう」
「まあ、ね」
遊んだのか遊ばれたのかよく分からない。 どちらにしろ、自分がなぜそんなことを考えているのかもシンデレラは不明だった。
「あら、どこへ行くの? 今から家に戻るのよ」
「……少々酔いを覚ましてから帰る」
再び会場に戻ったシンデレラは、自分に一番に声を掛けてきた女性の手を取った。
懸命に着飾ったであろう、リーシャと同じぐらいの若い女性────彼が耳元で囁くと、頬を赤らめて頷く。
それからシンデレラは早朝まで帰らなかった。
フォードリアで一泊の宿を取った彼は、その女性を抱いてみたが、彼の心はさして動かされなかった。
一遍通りの前戯のあとに、しゃにむに深く突っ込み、欲望のままに腰を振った。
女性はあられも無い嬌声をあげて悦び、乳房を揺らすたびに全身がヒクヒクわなないた。
彼の剛直は間もなくすべて収まり、膣奥までよく反応を返す、思ったよりもずっと具合のいい体だった。
受け入れた箇所から蜜を撒き散らし、夢中で彼にしがみついてくる────決して嫌ではない。
「あ……はっ、は、……あっぁあ!」
喘ぐ女性の子宮口に先端をピッタリと合わせ、こじ開けるようにして何度も突き上げた。
ただあの父親がリーシャを抱いていた手つき。
微妙に位置や指を動かす触れ方は親子のものではない。 始終、彼の頭にあったのはそんなことだった。