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革靴を履いたシンデレラ

第5章 魔女のタマブクロモドキ


アンリ自身もそうだったように、特別な異性としての感情を持たずとも、一方の思いがけない成長に戸惑う、そんなことはあるものだ。

おそらくクレアとシンデレラは双方に、大人へと向かう過程でズレてしまったのだろう。
アンリは幼いクレアを可愛がっていた彼をよく知っていた。


「気に食わんな。 あの家は子供が五人いる。 結局の所、クレアは口減らしとして嫁に出されるんだろう。 相手は倍以上も年の離れた爺ときいたぞ」

「だからって、うちにはどうすることも出来ないじゃないの。 さあ、暇なら猫たちにご飯でもあげて頂戴」

頬杖をついたシンデレラは機嫌が悪かった。

「今夕方に売りに行く肉をまとめてるから、夕方にルナ、街へお願いね」

「……なぜ女性が家のわりを食わなきゃならないんだ」

シンデレラは茹でられた骨付きの肉に群がる猫を眺めていた。
その時の彼の頭の中にはクレアの他にリーシャがいた。

「そりゃアナタ、どの家にも働かない穀潰しがいるからでしょうに。 誰とは言いませんけど?」

アンリの嫌味にシンデレラがムッとして答える。

「俺は四日もかけて、小姉さんと熊の他にキジ二羽とウサギを捕ってきたぞ」

「あら、ルナが今朝早くからそれを捌いていたのは知ってるのかしら」

「……なんだと」

自分は体がバキバキだというのに。

「仕方がない。 街へは俺も行こう……雲行きも怪しいし」

鼻歌を歌いながら家の前で熊の毛皮を干しているルナに、シンデレラは畏怖の眼差しを向けた。



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