
革靴を履いたシンデレラ
第5章 魔女のタマブクロモドキ
アンリは呆れ果てた視線をシンデレラに向けた。
「ねえ、馬鹿なの?」
また殴られた頭をさすり彼が呟く。
「相変わらずキレのある打撃だな。 まあ、教えた師匠の腕がいいんだが。 それはもちろん俺という」
クレアの口の悪さと気の強さは子供の頃から16歳の今まで全く変わらず。
シンデレラと彼女は、子供の時は兄弟のような間柄であった。
「昔はここまで仲が悪くなかったのに。 困ったものね……」
取り返した飼い猫のニーナを胸に抱き、大股で家を去るクレアの後ろ姿を見ながら、アンリがこぼした。
「反抗期かね。 大体、ニーナだって別に俺が呼んでるわけじゃない。 うちに来るものは仕方ないだろう」
「わざと煽る貴方も悪い。 あの子は純真な性格なんだから。 面倒見がよくって、兄弟の世話をする他にも、孤児院にボランティアに行ってるって話よ。 不仲になったのが、いつからといえば、シンデレラが女性をとっかえひっかえし始めた頃じゃないの」
ちなみにクレアは、人の顔面に興味がないという稀有な性質を持つ。
「ほう、なるほど。 それで、敬愛していた俺のイメージが崩れてしまったと?」
「自分でそれ言うのもどうかと思うけど。 あるタイプの女性から見れば、貴方みたいな男性は敵なんでしょうに」
「言っておくが、最近俺は女性を呼んでない。 フン、あんなガキの癖に都合のいい所だけ女だとか。 迷惑な話だ」
いつになく辛辣なシンデレラに対し、アンリは肩を竦めて息を吐いた。
