シャーク×ロストコロニー みにくいケイトはもう逃げない
第2章 25バンチの訓練コロニー
食堂での雰囲気が少し重苦しくなった事もあり、皆は解散した
勤務を終えて帰る者、
休憩を終えて職場に戻る者、
ザックは先程話題となった“救助された親父さん”が気になって医療チームスタッフのウォレンと廊下を歩いていた
「ザック、お前が救助したからと言って、気にする必要は無いんだぜ?」
「まぁね、ただこのまま寮に戻っても寝付きが悪そうだ」
ふたりは基地内の医療フロアにやってくると、そのままスタッフルームに入った
スタッフルームは開放的な空間で廊下側は壁が無く、低い受け付けカウンターのおかげで見通しが良かった
「あら、ザック」
さっそくスージーが声をかけてくる
先程の休憩のときとは異なり、金髪をくるくるとアップさせてまとめている
「ちょっと気になってさ、
“彼”の様子はどうだい?」
スージーと話すザックに、ウォレンは“俺は仕事に戻るよ”とジェスチャーしてその場を離れた
「休憩も終わって今からカウンセリングが再開してるわ、ちょっと覗いていく?
隣の待機所がマジックミラーになっているからカウンセリングの様子が見えるわよ?」
「いいのかい? 俺が見ていても」
「私達だけじゃないし、軍の管理部や警察も立ち会ったりしてるから」
スージーはザックを伴ってカウンセリングルームへ向かった
部屋は赤いランプが灯り、カウンセリング中の文字が浮かぶ
ふたりは隣の待機所の扉を開けた
中に入ると薄暗い狭い部屋となっている
壁全体がガラス貼りになっており、隣の部屋の様子が見て取れた
ちょうど患者らしき男性とふたりの制服姿の男が立ち会っている
待機所のほうにも数名の軍服姿の男たちがガラスを見つめていた
ザックはペコリと会釈をして隅の方へ陣取った
スージーも付き合うようだ
ザックは患者姿の“彼”を見つめる
シャトルのコックピットからカプセルを見つけて覗いたとき、当然“彼”は眠っていたので表情まではよくわからなかった
一見して憔悴しきった様子もなく、幻覚に悩まされているような病的な姿でもなかった
ごく普通の男性に思える
“彼がおかしな事を言っている様には見えない”
それがザックの印象だった