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シャーク×ロストコロニー みにくいケイトはもう逃げない

第2章 25バンチの訓練コロニー


カウンセリングルームでは職員の会話が続いており、待機所にはその様子がスピーカーで流れている


「じゃあ、事故当時の事はお話し頂いたのでこの時間は“その少し前”に戻りましょう
 そもそもライオンズゲート号に乗り込まれたのは何の目的です?ワトキンスさん
 観光?それともお仕事?」


「ええ、そうですね……
 サイド6に、“プレシディオ・コロニー”には良い医療施設があると聞いたもので、
 去年からやり取りをしていたのです」


患者姿の“彼”、ダニエル・ワトキンスは落ち着いた様子で話しを続けた


「もともとは娘の治療です
 娘は顔に障害を持っておりまして
 赤いアザのようなモノが広がってます
 幼い頃はほんの小さなシミのようなものだったのでとりたてて気にもしていなかったのですが十代になってから大きく、色も濃くなってしまった
 年頃の女の子には酷なことです
 その治療を目的に“プレシディオ・コロニー”に家族で向かったのです
 1年かけて、ようやく予約が取れたんです」


「あなたは良い父親ですな、ワトキンスさん」


確かにサイド1は初期型コロニーが点在しており、施設は古いものが多かった

もともと居住空間として建造されたスペースコロニーではあるが、生命維持の為には資源を調達したり、加工したり、生産性のある業種が多くなるのは当然だ


比較的新し目のサイド6や7に最新の技術が揃うことは多かった


特にサイド6は中立政治を標榜してきた過去もあり、一般市民には人気だった


「もちろんロンデニオン・コロニーの医療施設も訪れましたよ
 でも対応できなかったんです
 ちょうどその頃ニュースで“プレシディオ・コロニー”で最新鋭のナノスキン技術を取り上げられておりましてね
 
 もともとは退役兵の医療目的だったらしいのですが、娘の治療ができないか
 そこから向こうとやり取りが始まったのです」


ダニエル・ワトキンスは視線を落としながら、遠い過去のように話していた


「ワトキンスさん、私も軍に所属しているとは言え地球には家族がおります
 残した家族のために何か出来ないか、と考える貴方の気持ちはよくわかりますよ

 機会を改めて是非娘さんをサイド6に向かわせてやって欲しいものです」


カウンセラーはにっこり笑った

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