
シャーク×ロストコロニー みにくいケイトはもう逃げない
第5章 ケイト・アウェイキング
基地に帰投する前に状況報告をしておいたおかげでモビルスーツカタパルトには救急車輌が先に待機していた
そこからはスムーズだった
ザックとジェームスを引き渡したあと、エイミーは数々の報告業務に追われる羽目になった
バックアップデータは抜かれ解析にまわされ、作戦司令やメカニック主任にも質問攻めに遭った
そして膨大な資料作成を押し付けられたのだ
医療カプセルで眠るザックとジェームスの様子を見に来たのは数時間経ってからだ
本来は面会制限されているが、同僚ということもあって入室を許可された
大きなガラスの向こうにいくつもの医療カプセルが並んでいる
ほとんどはカプセルのカバーが空いたままだ
端のほうにふたりのカプセルがあった
ふたりとも眠っているようだったが、ジェームスはエイミーに気がついた様子だ
ガラス越しに手を振るエイミーだが、ジェームスのほうはといえば、目はこちらを認識しているようだがリアクションをとれる状況ではなさそうだ
そしてザックは昏睡のままらしい
遠くからなので表情までは覗けない
〈お願い、ザック先輩!どうか無事で!
せっかく一緒に働けるようになったんだよ
それも同じ小隊なんだよ
先輩のピンチのとき、わたしそばに居たんですよ
たまたまわたし助けられたんです
こんな偶然あります?
だから、おねがい
また学校のときのように話して下さい
怒鳴ってください
叱ってください
そして、アタマくしゃくしゃってして下さい
お願いだよ、ザック先輩〉
涙が出そうになるのを必死でこらえる
こんとこで泣いてちゃダメだ、と自分に言い聞かせる
ぼうっとガラス越しに様子を見てるとき、
同じ部屋にもうひとり居ることにようやく気がついた
女の子
同い年くらい?
いや、年下か……
どうしてこんな女の子が軍の基地に居てるのか
しかも女の子は病院着のような服を着ている
〈ここに入院しているのかしら?〉
エイミーは軽く会釈をして部屋を出た
その少女は長い間昏睡状態であったケイト・ワトキンス
シャトル事故の生存者
彼女は数時間前に長い眠りから目覚めていたのだった
