シャーク×ロストコロニー みにくいケイトはもう逃げない
第5章 ケイト・アウェイキング
ガラス越しに映るザックの医療カプセル
そこへ自分の顔がガラスに映りこむ
ケイトはぎゅっと握りこぶしを作ってしまう
“また……アザが広がってるわ……
以前は顔の半分程度だったのに、
今ではほとんどが……”
ロンデニオン・コロニーに住んでいたときから何度も美容整形を受けてみた
両親は“年頃の娘はさぞかし辛かろう”といろんな病院に連れて行ってくれた
だが、何度治療してもこのアザだけは消し去ることが出来なかった
原因不明の顔のアザ
父親ダニエルはケイト本人よりも憔悴していた
〈これは呪いだ〉
酒に酔ったある晩、父親は酩酊してしまい普段口に出さないような事をゴニョゴニョつぶやいていた
滅多に酒を飲まない父親の姿をケイトは面白がっていた
〈これはロブ・キントナーの呪われた遺産なのだ……、悪魔のやつめ、呪うなら俺を呪ってくれ……ケイト、俺のかわいい天使
すまない、すまないケイト……〉
〈パパ、苦しいよ!〉
ダニエルは号泣しながら幼い娘を抱きしめるしか出来なかった
ケイトはその時はじめて自分よりも父親のほうが良心の呵責に苦しんでいることに気付かされた
小さい頃は鏡などそんなに見ることがなかったから、ケイト本人は顔のあざのことをそこまで気にしていなかった
当時は小さな濃い染みのようなものだと思っていた
ハイスクールに通うようになってからは、周りの気遣いが逆に気になって人と関わりを持たなくなるなっていった
学友にアザのことを聞いてきても構わなかったけれど、相手が逆に何も言い出せなくなる光景が度々有ったのだ
特に酷いイジメがあったわけでは無いだけマシかもしれない
それでもケイトには親友と呼べるような存在は皆無だった
それは生徒だけでなく教師も同じだ
〈わたしの顔をじっくり見るのは親か、病院の先生くらい〉
ケイトのハイスクール生活、それはとても孤独なのだった
それからというのもケイトは家庭の中ではとにかくおしゃべりで、明るく、活発になっていった
学校でろくに話しをしないぶん、家でたくさん喋って、笑う
学校で孤独な分、家では3人家族いつも笑顔に溢れていたのだった…