シャーク×ロストコロニー みにくいケイトはもう逃げない
第7章 海岸線
基地から街の方までは結構な距離がある
コロニーのマッタンにあるドッキングベイに基地は隣接しているが、そこからは荒れ地の坂道をひたすら下っていく
シリンダーの中心から外壁までの傾斜はかなりキツい
当然クルマの乗り心地も最悪だ
舗装されてはいるものの、とても綺麗とは言えない悪路なのだ
それでもエイミーは夢に出てきた海岸線のドライブを思い出す
“ああ、このあと海で泳いで、そのあとは……”
と、先の想像をして顔を赤らめる
坂道が終わると、やがて閑静な住宅地に入っていく
だが既に住民たちは他のコロニーに移動したあとで、街はすっかりゴーストタウンと化していた
当然この辺りのエリアは比較的富裕層が暮らしていたので、早々とここを離れたのだろう
逆に街の華やかな中心部の近くに暮らす住民は雑居ビルや廃アパートに暮らしており、移住するような資産の余裕も無い貧困層が集まっている
クルマは住宅地を抜けて、ビルが建ち並ぶ街の中心部へ近づいていく
ジョージタウン
見慣れた街の風景、よくマット、スージー夫妻に連れられてやってきたエリアだ
ザックは街の中心部、コロニー外壁エレベーターの前でクルマを停めた
外観はいつも通りだが、中は黄色いテープを張り巡らされ立入り禁止となっている
ザックはここから宇宙空間に放り出された
奥は見えないが、何かコンクリートの塊とむき出しの鉄骨のようなもので厳重に塞がれている
ザックは確認だけをして、一路教会を目指す
“あれから2日間経ったか? 3日か?
ずいぶん時間が経っちまった
クレリアとフィルは無事なんだろうな!”
だいたいの方角しかわからないが、街に誰も歩いていないので誰かに聞くわけにもいかない
端末を取り出して位置情報を確認するが、相変わらずこの辺りは電波が妨害されている
街の路地裏を片っ端から入っていく
どれも見覚えがあるようでいて、無いかもしれない、なんとも頼りにならない記憶だ
何度か焦って急ハンドルをきると後部座席から「痛いッ!」と子どもの声が聞こえてきた!
慌ててザックは急ブレーキを踏む
持ってきたバッグの下の布生地
てっきり銃火器を隠すシートかと思っていたが、めくってみると少女の頭が出てきた
「ケイトっ!?」
「アイタタタ、もう!ザック運転が下手ね」