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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第3章 未婚獣人たちの慰みもの*

セイゲルさんの家を出ての感想もまたデカい、ということだった。
住宅街や遠くにあるビル群は人間のそれと変わらない風景。
ただそれが縦も幅も二倍ある。

そしてこれは何となく予想していたが、道行く獣人が物凄くジロジロと私を見てくる。
やはり彼らはすべて雄なのだろうと思う。

「わっ、生の雌だ。 俺初めて見た」
「しかも一人でだぜ。 ちっせえなあ」
「あんなんでホントに出来んのかねえ」

早足で歩くも何人かの暇そうな獣人がのんびり後をついてくる。

「ご主人。 振り向かないで、もう少し早く歩けませんか」

シンがぴったりと横についてくれてはいるが、どうしても怖さで体が強ばる。
彼らは私から一定の距離を置いてはいるようだ。
そのうちにめいめいが話しかけてきた。

「勃っちまうだろこんなの」
「かっわいい。 おーい、どこ行くの?」
「ねえ、ちょっと触ってくんない? 一生に一回でいいんだよ」

本気なのか面白がってるのか。

怖い、怖いよ。
こんなモテ期要らないってば。

彼らにとっての人間の女性。
……それは交尾の対象。

「シン、シン。 何これ、どうしよう?」

「普通は外へは夫婦で連れ立って、雌は顔や体を隠しますからね。 とにかく門まではあと五分です、走りましょう!!」

ああ、セイゲルさんやシリカくんの言っていた話の内容が、ようやく私にも理解しかけてきた。
涙ぐみながら頷いて、必死で走る。

『はあまあ、もう一度門に行くぐらいでしたら』

セイゲルさんの家で話したところ、シンも嫌そうにではあるが、了承をしてくれた。

息を切らせて走っているうちにそろそろ目的地が見えてきた。



────ここの門は二重構造となっている。

メロルくんたちやシンから少しだけ聞いた。
セイゲルさんと出会って話したのは二つの門の間。

一つ目の門。
シンのように二つの世界を行き出来る者。
セイゲルさんのような仕事(元々彼はここの士官らしい)に就いている者。
それから私が今、首から下げている通行証を持つ者がそこに入れる。

二つ目の門。
獣人と人間の住処と隔てる所。
どうやらここを通るのが無理っぽいという話。
だが、門の間でセイゲルさんと話していた時、実は偶然にも私は見付けていたのだ。
植え込みの間。
壁に空いた、私が潜れそうなギリギリの大きさの穴を。

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