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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第8章 終章「覗きとは違います、これは使命なのです!」*

後から改めて知ったことですが……そしてご主人にあえて口には出しませんでしたが、ご主人とは服飾のセンスが皆無です。
ちなみにのちに高校のスカート(制服)と、商店街で購入したという、激安トレーナー(水玉)の画像を見せた時のセイゲル様は、悶絶していました。

それはともかく、私はご主人の現状を憂いていました。
早くに大人になることを強いられたご主人は、無鉄砲なほど旺盛過ぎる自立心を身に付けました。
結果、ともすれば異性にも平気で楯突くような、かなり面倒な女性に育ってしまったのです。

「……お気持ちは分かりますが。 私のご主人は弱い者が虐げられるのは大嫌いですから。 ついでに本格的に男性を嫌う前に、多少は異性に慣れさせる必要があるでしょう。 私は人間の男性をまずご主人にあてがう事に決めました」

するとセイゲル様はその顔から笑いを消しました。

「それは……嫌だな」

「嫌、というと?」

セイゲル様は何だか決まりの悪そうな表情をしました。

「知らん。 今気付いたんだから仕方ねえ」

ほう、これは。
私の脳内でお二人のカップリングが成立しました。
それからの私は、ご主人とセイゲル様の仲を取り持つために奔走することになります。





春の風に乗った桜の花びらが一枚、歩いていた私の眼前に舞い踊りました。
ふと、公園に落ちたたくさんの桜を掬い、私に降りかけてはしゃいでいたかつてのご主人が頭に浮かびました。


ハリス家はきっと、騒がしく笑いの絶えない家庭になるでしょう。

────琴乃様、もう私のために泣かないでください。

別れとは寂しさと悲しみを抱えるもの。
人は本能の飢えに耐えきれず手を伸ばします。
貴女が伸ばして握り返された手は、大きな愛情に溢れていると私が保証しましょう。


新たな家族を得た大切な貴女に、私は祝福の言葉を贈ります。

さようなら。




[完]
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