獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話
第8章 終章「覗きとは違います、これは使命なのです!」*
私にとって一度の人生とは巨大な時計の振り子のようなものです。
といっても、年若いご主人には分からないかもしれませんね。
その振り子が、何百回も何千回も往復する時間を、私は生きてきたのですから。
……それにしても一度肉体を離れる私たちの現象を、『脱皮』と形容する獣人のセンスはいかがかと思います。
セイゲル様がそう伝えた時のご主人の怒りようが、私には目にみえるようです。
「……ふう」
私は大きく息をつきました。
まだ体が出来たてなので、湿っていて多少気持ちが悪いですが、今度の私は栗毛のようでした。
属性が近しく種族的に上位となる獣人は魂の私の飼い主であり。
人間は意思上での私の飼い主です。
私は獣人世界を存続させることを使命として、この世に生まれ落ちました。
今から八年前の春。
私は人間世界の、供花が少なく参列者も僅かな寂しい、葬儀場の前で足を止めました。
そこには制服を着た、背の高い少女が立っていました。
涙も言葉もなく硬い表情で、通る人通る人に深々と頭を下げていた、それがご主人でした。