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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第8章 終章「覗きとは違います、これは使命なのです!」*




一つの使命を終えた私は、再び人間の世界に向かおうと思いましたが、最後に一目だけご主人の様子を観察してから行くことにしました。
あることが気になっていたからです。

セイゲル様の家に戻り寝室の位置を確かめました。
木登りは得意ではないのですが、建物の隣に物置があり何とか上を目指します。

「………!!」

ご主人の声が聞こえます。
ベランダに到着した私はガラス戸越しに室内の様子を伺いました。

「だから脱皮って言い方は止めて! シンは爬虫類じゃないって言ってるでしょう」

「あーうん、まあ。 理屈では似たようなモンだけどな。 ところで……お前……大丈夫か? 言ったがシンは死んだわけじゃないし、単に役割を果たしただけだ」

セイゲル様に八つ当たり気味に接しているご主人の目は赤く、顔色も良くありません。
床に跪き、ご主人を心配そうに見つめるセイゲル様に、ご主人は慌てて俯きました。

「だ、大丈夫です。 セイゲルさんが話してくれましたし……それでシンが納得してるなら」

「ん……あれはそういう習性だ。 飼い主が新しい家族を見付けたら古い体を捨て、また新たな飼い主を探しにいく」

「……家族」

ぼんやり呟いたご主人は、しばらく何かを考えるように目を彷徨わせていましたが、やがてそろそろとセイゲル様の肩に手を置きました。

「そう…ですね。 そうなんですね。 セイゲルさんが私の家族なんですね。 わ、私の家族……」

ブツブツ口を動かすご主人をセイゲル様が抱きしめます。

「そうだ。 お前は死ぬまで俺の嫁だからな」

ご主人は安堵して少しばかり顔を綻ばせます。

「セイゲルさん…私を……本当の奥さんにしてください」

セイゲル様は少しの間ご主人に見入っていましたが、やがて薄い生地の、シンプルなドレス姿の夜着を身に着けているご主人の胸に顔を埋めました。

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