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獣人さんが住む世界で大っきいカレに抱き潰されるお話

第8章 終章「覗きとは違います、これは使命なのです!」*




そしてセイゲル様。
ご両親の保険金と偽り毎月援助をしていたのはセイゲル様でした。

当時の私はまだご主人と暮らしてはおらず、将来獣人の妻となるにめぼしい女性を軍のデータベースに登録していました。
出来るだけ人間世界にしらがみが少なく健康。 容姿、遺伝子に極端な欠陥がなく頭の良い女性がそのターゲットです。

「白いの。 そりゃまた偉い若いな。 両親が死んだのか……可哀想に」

ご主人の情報を登録している際、セイゲル様が私の後ろから、画面を覗き込んできました。
将校になったばかりの、その時のセイゲル様には何の思惑もなく。
のちに援助を申し出た理由を話してくれました。

「施設なんかじゃろくな教育を受けらんねえ。 俺の同僚がそうだったから分かるんだけど、あの子虐められてただろ? 年ごとに表情が不自然に明るくなってた。 両親以外といる顔は暗いのに。 こっちも軍なんて、細かいやっかみは日常茶飯事だけどさ。 親に気を遣うようないい子の芽はつぶしたくねえんだ。 こっちの世界に来なくってもさ、向こうで頭のいい良い奴が増えるのは、きっと俺らのプラスになる」

何の気なしにセイゲル様はそんなことを言いました。

「でも何だコイツ。 可愛いな」

ハロウィンの仮装をしたご主人の画像をみて、セイゲル様はふっと笑いました。
獣人を模したものでしょうか。 狼の被り物で顔や手足を覆った、まだ幼いご主人と亡きご両親の姿でした。

親切である反面、セイゲル様とはかなりおおらかというか…いえ、おおざっぱというか…いいえ。 寄付をした事実さえ忘れてしまう性格でした。


それでも二年も三年も経つうちに、私はご主人と住み始め、いつの間にかセイゲル様も、ご主人のことを気に留めるようになっていきました。

「や、なんかこの女、趣味おかしいだろ。 こないだお前からもらった画像、ほらエコノミーバッグとか作ってたやつ。 ライオンがウサギ抱っこしてる刺繍柄の。 俺、あれ思い出すたびに二週間は腹筋が辛くって」

ぎゃははと笑い声をあげてお腹を抱える、まだこちらも年若い獣人です。

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