ぼくはキミを追い払えない 〜エクソシズム†ロストコロニー
第2章 ファ・ユィリィ
だがファは難しいことは理解できずに居るようだ
「えらくおとなしくなっちゃったのね、フィル
こないだまで黒い霧がかかっていたのに!」
「黒い霧?」
ファは返事もせず、また校舎の方へ戻っていった
“まだ子供には早かったかな”
とフィルは再び横になって仮眠を取り始めた
ファは振り返って彼の姿を見つめていた
そのとき、ニヤリと笑みを浮かべる
その様子を反対側の校舎から見ていたのはシスター・リンダだった
“あの子……、やっぱり様子が変だわ?”
リンダは妙な胸騒ぎがしていた
午後もイベントの準備が続いていたが、神父とシスターたちは定例の子どもたちを集めたお遊戯をするため教室へ集まっていた
広くて天井の高い食堂でフィルはひとりで高所用の脚立に乗って飾り付けの続きをしていた
お遊戯が始まる前にミラー神父にお願いされていたのだ
「お言葉に甘えて、もうひとつ天井に飾りつけを頼みたいんだが、いいかい?」
「もちろんです、ミラー神父」
そう言って追加の作業を任されていたのだ
天井の梁に紐を結んでいたとき、締め切ったいた食堂に少し風が吹いたように感じた
誰かが入ってきて扉を開けたのかな?と思っていたが食堂には誰も居ない
また、ドアが動いたような形跡もなかった
気のせいか?と思った瞬間
天井の高い空間に人間のカタチをしたような黒い霧が現れた
モヤモヤした不定形な黒い霧は時おり集まって濃くなったり、また四散して薄くなったりを繰り返す
その人間の顔の輪郭が出来上がったとき、フィルは一瞬ミラー神父の整った顔立ちを思い浮かべた
「ミラー神父?」
しかしよく見るともっと小さな子供のように思える
小さな男の子だ
フィルに見覚えは無かった
“誰だろう?”
空中に浮かぶ黒い霧はぼんやりとしながらも男の子の姿を留めていた
男の子はズボンのポッケに手を突っ込みながら、フィルを見つめていた
恐ろしくなって身を構えたとき、
フィルは足を滑らせて脚立から転落してしまったのだった…