ぼくはキミを追い払えない 〜エクソシズム†ロストコロニー
第3章 シモンズ・シモーヌ
シモンズとフィルは少しばかり談笑してパブを出た
廃墟となったビルの路地裏を抜けていく
フィルは“ひとりで来ていたなら絶対にこの通りには入っていかないな”と思いながら彼女のあとをついて行った
整備が放棄された車や、ビルから落ちてきた看板を避けながら路地裏を進むと、小さな手作りの家がビルの隙間に立っていた
中に入っていく
適当な木の板を張り合わせただけの簡素な建物は今にも崩れ落ちてきそうだ
「ボヤボヤしないで、ついてきて」
こころなしかシモンズの口調がキツくなっていた
これがもともとの素面なのか、それともここにはあまり来たくなかったのか
暗い通路を抜けると、広いスペースに出た
椅子がたくさん並んでいる
ここは汚いながらも手作りの教会だったのだ
よく見ると祭壇にも手作りの大きな十字架が飾られていた
しかし主の姿は無かった
十字架だけだ
祭壇の下に人が居てる
一人は司祭、もうひとりは祈りを捧げるように屈んでいる信者のようだ
「ありがとう、クレリア
少しは天に召された娘の苦しみが和らぐだろう、いつもすまないね」
信者は軍服を着ていた
彼は立ち上がり、その場を立ち去った
すれ違うフィルとシモンズに頭を下げて、消え去った
司祭はこちらのほうを見ていたが、その相手がシモンズとわかるとあからさまに不機嫌そうな表情を見せた
「久しぶり、クレリア」
「もう顔は見たくない、シモーヌ」
フィルは焦った
やっぱりシモーヌはここへ来たくなかったのだろう、あきらかに喧嘩している最中のようだった
「あれ?」
フィルはクレリアと呼ばれた司祭の格好が気になった
通常、司祭は男性が務めるものだ
シスターは催事を執り行わない
「……アナタ、女性ですよね?」
クレリアは男装しているのだ
ここは本当の教会ではないのか?
この人はコスプレの人?
フィルは戸惑っていた
「シモーヌ、いったい誰を連れて来たんだ?
今度は男に走ったのか?」
「私は昔からバイセクシャルさ?知ってるだろ
アンタにお客さんだよ」
「尻の軽いお前の事なんか知らないよ」
「アンタの尻が重すぎるのさ、クレリア」
ふたりは今にも喧嘩を始めそうだった