ぼくはキミを追い払えない 〜エクソシズム†ロストコロニー
第1章 悪魔祓い
フィルは改めて言葉のチカラを知った
そこに暴力的な力は存在しない
彼らは神の力を信じ、また神の力を信じると言うことは同時に悪魔の力も信じることだと知った
成長して学生生活を楽しんでいるフィルにとって教会とは堅苦しい古い風習のように捉えていたが、目の前の男の声を発する病的な目をする幼馴染を、神父たちは信仰によって救おうとしていることを確信していた
本当に悪魔が居たのだ
「より一層すみやかに、神の憐れみが私たちに注がれますように!
また、悪魔でありサタンである蛇、
いにしえの蛇をつかみ、
縛り上げ、
地獄の深淵へと突き落としてください!
もはや民を堕落させることができないように!
私たちの主、神である主の御名によって、
汚れなき乙女、神の御母マリア、
幸いな大天使ミカエル、
幸いな使徒ペトロとパウロ、そして全ての聖人たちの取次ぎによって、
悪魔の敵意と惑わしに満ちた災いを駆逐すべく、
私たちは恐れることなく、これを始めよう!」
老神父も十字架を突き出した
フィルもエレンの十字架をかざす
エレンはぎゃあぎゃあとわめき、苦しんでいた
身体を反って、痙攣させる
おえっ、と青い何かを吐き出した
腐ったような異臭が部屋中に立ちこめる
ジェームスとフィルは十字架を突き出しながら思わず顔をそむけるが、マックスは一切目を逸らす事なく少女を睨みつけていた
少女は痙攣を終えて、肩でぜぇぜぇと息を整えている
そのとき
エレンは可愛らしく年相応の高い声を発した
「……フィル、フィル!来てくれてありがとう
私、外の空気が吸いたいわ!
あなたもこの臭い嫌でしょう!
窓を開けて!お願い!」
フィルはその声が昔のままのエレンと同じ声だと思い出す
ああ、ボクをいつも守ってくれていたあの頃のエレン!!
フィルが立ち上がろうとするところをジェームスは肩の上から強い力で押さえつける
「フィル、窓に近付くな!ジョセフの二の舞いになるぞッ!?
これがアイツの手なんだ!
優しい人間の隙を突いてくるのだ!
悪魔の言葉に耳を貸すなッ!」
「でも神父、今のはエレンの声です!
エレンが助けを求めたのですよ」
フィルは神父の腕を退けようと掴んだ